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Posted by: ifcayouth Category: 措置解除 Comments: 0 Post Date: 5月 28, 2017

ユース・サミットのためのスピーチ

 ゆきか

[2015年7月12日・シアトル]

はじめまして。私の名前は幸加(ゆきか)です。28歳です。IFCAユースプロジェクトの二人いるコーディネーターのうちの一人です。また、ブリッジ・フォー・スマイルというNPOでユースの奨学金支援プログラムでユースのサポートを行っています 。
私は、19歳まで母親のもとに暮らしていました。幼い頃から続いた暴力に耐えきれなくなり、19歳になったばかりの冬のことです。雪が残る寒い2月。母親の制止を振り切り裸足で逃げ出しました。16歳で高校を辞めさせられ、働かされていた19歳の私が行ける場所は、ありませんでした。勇気を振り絞って、逃げ出したのに、行く場所は里親でもなければ、施設でもありませんでした。そんな私は家を飛び出してから、どこに行ったのか、日本の児童養護の現状と私の考える課題についてお話します。

日本の児童の定義は18歳に満たない者をさしています。児童がなんらかの理由でフォスターケアの元に入るのには様々な理由があります。親の離婚や経済的な事情も多いのですが、虐待が大きな割合を占めるため、まずは虐待にスポットを当てて、お話していきます。

それでは、1990年から2012年までに児童相談所が受けた虐待相談件数を見ていきましょう。1990年の1,101件に対し、2012年の相談件数は66,701件と、22年もの間に60倍に相談件数が増えています。(スライド1)日本は2000年に児童虐待防止法が制定されてから、虐待を受けたと思われる児童を発見した場合、福祉事務所または児童相談所への通報が義務になりました。義務になったということもあり、相談件数の増加が加速したと推測できます。
児童虐待によって子どもが死亡した件数ですが、データによると0歳児が4割になっています。ただし、この数値はあくまでも出生届を出されている児童にすぎません。つまり、届け出が出されていない児童は含まれていないため、実際はもっと高い数値であることが考えられます。
次に子どもが受けた虐待の内容について見ていきます。まずは虐待の種類の割合です。1番多いのが身体的虐待(35%)。つぎに僅差で心理的虐待(34%)で、ネグレクト(29%)と性的虐待と続いています。(スライド2) 性的虐待は2%と1番低い割合になっていますが、性的虐待は非常に発見されにくいため、実際はもっと多いかもしれません。
次に虐待の加害者のデータです。母親からの虐待が57% 父親からが29%で、母親が多くの割合を占めています。(スライド3)これはなぜだと思いますか?日本は核家族化が進んでいるため、母親の負担が大きくなっています。そのため、育児ストレスが原因で母親から受ける虐待が目立っているのです。ここで言えるのは、母親の支援が必要とされていて、それが虐待予防の一つの鍵であると私は思います。

それでは、次に保護された子どもたちが行く先です。子どもたちの行く場所のほとんどが児童養護施設です。児童養護施設の規模はさまざまあります。ほとんどの児童は20人以上が暮らす大舎制の施設で暮らしています。3歳~18歳までのさまざまな年齢の子どもが何十人もいる、プライバシーのない生活を何年も過ごさなくてはなりません。これでは子どもたちが家庭的な生活を送ることは困難です。現在は、より家庭的な生活を送れるよう大舎制を減らし、12人以下の児童が暮らす小舎制や6人定員のグループホームを増やす動きがあります。2008年には370 件あった大舎制施設が2012年には280件と減少しています。それに伴い、小舎制とグループホームの件数が比例するように増えています。少しずつではありますが、子どもたちの生活環境が改善されてきてると言えるでしょう。(スライド4)

私が生活していたところは、自立援助ホームという15歳から20歳までの家庭がない児童や、
家庭にいることができない児童が入所するところでした。簡単にいうと、自立を目指す子どもが入る1年間だけ住める家です。私が入ったのは2006年。自立援助ホームという形が、日本で出来始めたのことでした。ようやくたどり着いた場所。それは里親でも施設でもない、自立援助ホームでした。自立援助ホームは自立が目的のホームなので、1人で生活をするための生活基盤を整えること先決です。しかし、当時の私は大学に進学したかった。それは、なぜか・・・。小学校から高校生まで、友達とは学校でしか会えませんでした。放課後に友達と遊んだことが1度もなかったからです。また、日本は学歴社会のため、進学した方が将来のプラスになると考えたからです。自立援助ホームでの1年間は自立と進学を目標に仕事と勉強に没頭しました。無事に自立と進学を果たせた私に降りかかったのは、生活費と学費との戦いでした。

ここからは、日本のフォスターユースが抱える「進学格差」について話を進めていきます。まずは、進学と生活にかかる費用を簡単にお話します。日本の4年制大学を卒業するためには、220万円から520万円の費用がかかる、というデータがあります。(スライド5)調査によっても違いますが、一人暮らしにかかる生活費は毎月11万円から15万円です。(スライド6)
親元で育つ子どもたちは、学費・住居費・生活費などの経済的援助を受けて学生生活を送ります。しかし、フォスターユースは、身近な大人からの経済的援助がないため、学費・住居費・生活費の壁を自分一人で乗り越えなくてはなりません。そのため、日本のフォスターユースの高校卒業後の進学率は、高くありません。日本全体の高校卒業後の進学率は76%です(大学・専門学校両方含む) では、日本のフォスターユースの進学率はどのぐらいだと思いますか?日本のフォスターユースの進学率はたったの 22%です。さきほど申し上げたように、進学には何百万もの学費がかかります。フォスターユースには経済的援助を期待できません。進学したいという気持ちがあっても学費や生活費を用意できず、諦めてしまう子どもが大勢いるのが現実です。(スライド7)
私も経済的事情で、退学を考えたことがあります。どんなに強い意志を持って進学しても学業とアルバイトの両立が多忙で、大変なものだからです。身近に相談できる大人もいません。なかには心身ともに疲弊して、生活が成り立たないケースもあります。その結果、フォスターユースの中退率は全国平均の3倍にものぼります。

「18歳で進学を選択できない。」
「アルバイトに時間を取られ卒業をあきらめる子どもたち。」
これはただの”進学格差”という言葉だけで表せるものではないと私は思います。希望をもてない子どもたち。希望をもつことが許されない子どもたち。これは”進学格差”という表現だけではなく”希望格差 “とも呼ぶことができます。

私は4年間大学に通い、無事に卒業することができました。卒業してから4年経ちますが、現在も奨学金の返済をしています。現在は、奨学金の選択肢が増え、少しずつフォスターユースが進学しやすくなってきています。しかし、まだまだ進学率は高くありません。これは、日本が抱える児童擁護の深刻な課題の1つだと思っています。この課題を少しでも解決していきたい。自分と同じような境遇の子どもたちを応援したいという気持ちが強くなり、現在、ブリッジ・フォー・スマイルというNPOでフォスターユースの奨学金支援プログラムに参加しています。http://www.b4s.jp

日本の児童養護の課題は、いま話したこと以外にもたくさんの課題が存在します。私は少しでも、フォスターユースが一般家庭の子どもたちと格差のない社会を実現するため、これからもユースの環境改善に向けて活動を続けていきます。ご静聴ありがとうございます。

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