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Posted by: ifcayouth Category: アメリカと日本の児童福祉のしくみ Comments: 0 Post Date: 6月 2, 2017

ユース・リーダーシップについて

 デイビッド・イングリッシュ

こんにちは。私の名前はデイビッド・イングリッシュです。私はインターナショナル・フォスターケア・アライアンスのコミュニケーション・コーディネーターをつとめています。私自身も、10年間をフォスターケアのもとで育ちました。そして、今年、ケアを離れました。

今日は、私の仲間のひとりと、私で、ワシントン州のフォスターケア・システムにとって、重要なふたつのトピックについてお話しします。

私のプレゼンテーションは、米国においてのユース・リーダーシップの役割について。そして、ワシントンのユース・リーダシップのモデルともいわれる、いくつかの例について。またそれを、日本ではどのように適用することができるのか、に焦点をあててゆきます。

まず、ユース・リーダーシップとは何を意味するのでしょうか。私たちがよく使うフレーズがあります。“我々無しには、我々についての決断はしてはならない”というフレーズです。

これは、文字通り、当事者に影響がある決断がくだされる時、当事者の意見が取り入れられるべきだ、ということです。例えば、労働組合は、アメリカでも日本でも労働者が職場において、同等の立場と権利と声を持てるために存在します。それと同じように、ユース・リーダーシップにおいては、ユースたちにトレーニングと内面の成長をうながす機会を与えることによって、社会の中で大人と同じ、地位、立場にたって、自己の権利を擁護し、前向きな変化を創造してゆくことを言います。

ユース・リーダシップのかたちはいくつかあって、そのことについては、後でくわしくお話ししたいと思いますが、例えば、世の中に変化をもたらすために自分のフォスターケアでの経験を多くの人に伝える、というシンプルな行為から、もう少し複雑な例をあげれば、ひとりのユースが他のユースをワークショップで指導したり、今、私がしているように、コンファレンスなどでスピーチをしたり、ユースが児童福祉の一番良い政策や取り組みや実践について、アドバイスする、などがあげられます。

それではなぜ、ユース・リーダーシップが重要なのでしょうか。政治家の役目を例にします。政治家とは、我々ひとりひとりの苦難や、成功やニーズや要望を理解し代弁するいわゆる代表者です。ユースたちにこの“代表者”としての権限と役目を与えることによって、他のユースたちの代弁者となるだけでなく、未来にインパクトを与えるリーダーへと育てることができます。

今日、これから見て行くリーダーシップのモデルには、端的に言うと4つのタイプがあります。ユース・デベロップメント(ユースの内面的な成長)、ユース・アドボカシー(ユースの権利擁護)、アドヴァイサリー(顧問)そしてリーダーシップです。これを見るとわかるように、具体的には、リーダーとしてのスキルを磨くこと、システムの改善し、また政策に影響をあたえる力を蓄えることなどを意味します。

最初に私が紹介するのは、フォスタークラブという団体です。この非営利団体はオレゴン州がその活動の拠点ですが、たいへん影響力のあるユース・デベロップメントの活動を、全米規模で展開しています。

1999年にセレスト・ボドナーという女性が立ち上げたこの団体は、最初はフォスターユースと里親たちのための団体でしたが、現在では、ユース・リーダーシップとアドボカシー(権利擁護)の活動に焦点を定めています。

フォスタークラブは、他の団体から助成金を受けていますが、オールスター・インターンシップというプログラムは、フォスタークラブの事業なので、サービスを受ける人たちから料金を集めます。また、この団体は、寄付金もつのります。

フォスタークラブの特徴として、オールスター・インターンシップというプログラムを実施していることです。毎夏、8週間に渡るインターンシップ・プログラムを2度、行います。20名ほどの社会的養護の当事者、ケアを離れて自立したユースたちが選出され、インターンシップに参加するために、オレゴン州のシーサイドというところに、全米から集まります。参加者には、生活費が与えられます。ストラテジック・シェアリングという自分のフォスターケアでの体験を語るやり方を習ったり、リーダーシップのスキルを学んだり、各地を回ってプレゼンテーションをし、自分たちの権利擁護の仕方も習います。私は、2年間に渡りこのオールスター・インターンシップに参加しましたが、2度とも素晴らしい体験でした。1年目はリーダーシップのトレーニングを受け、2年目は先輩として、1年目のプログラムのユースたちのリードをしました。

ふたつ目に紹介するのは、モッキンバード・ソサエティというシアトルを拠点に活動する非営利団体です。ジム・セオフェリスという人が2000年に設立しました。ユースが自らの声をつかって政策を変えていったり、基本的なスキルを学ぶ機会を与えられます。今では、この団体のユースはワシントン州内で6つの地域に支部をもって、活動をしています。ホームレスユースのプログラムや、先ほども紹介されたモッキンバード・ファミリー・モデルというプロジェクトも実施しています。

モッキンバード・ソサエティの活動資金は、フォスタークラブと似ています。サービスを提供して料金を集めた、助成金や寄付を受けています。

モッキンバードのいちばん特徴的な活動は、ユースアドボカシー(権利擁護運動)のサイクルです。
1年を通じて、 当事者のアドボケートを養成し、そのアドボケートたちが政策提言することで、社会的養護の当事者の生活向上をはかってゆくのです。先回のセッションでは、4つの法案を提案し、他の数個の法案を可決することに成功しました。モッキンバードのユースたちがワシントン州の首府でデモ行進をし、議員と直接会って、法案の必要性について話しました。1年の大半は、ユースたちが集まって、議会に提出する新しい法案を考案する作業をし、その法案をどうしたら可決できるのか、という戦略的な計画も協議します。

次に、パッション・トゥー・アクションという団体について話します。ワシントン州のインデペンデント・リビング・プログラム(自立支援プログラム)の資金に支えられたユースからなる顧問委員会です。2005年に設立されたこの団体は、ワークショップや、州の政策やプログラムについてのアドバイスを与える活動などをとおして、ユースリーダーたちを育成しています。
パッション・トゥー・アクションの活動を通じて、ユースたちは、ワシントン州内の児童福祉のプログラムの中でも、特にフォスターユースの日々の生活に関連の深いプログラムに、影響を与える機会が得られています。
パッション・トゥー・アクションの団体としての特徴は、参加者であるユース、つまり顧問委員と、プライド・トレーニングという里親トレーニングにあります。ユースたちは、ワシントン州の各地から州政府の資金で5週間に1度シアトルまで来ます。リーダーとしてのスキルを磨いたり、プログラムを構築したり、他のユースたちと交流したりします。

顧問であるユースたちは、里親研修に出向いて行って、フォスターケアについて、ユースの視点から語るワークショップをします。ユースには給金が与えられます。このユースによる里親教育という考え方が、全米で広まり、いくつかの州では、ユースたちの視点を里親研修の内容として取り入れることを義務にしています。

私が最後に紹介する団体は、私の心にもっとも近く大切な団体、インターナショナル・フォスターケア・アライアンスです。2012年に、粟津美穂によって、ユース・リーダーシップのNPOとして設立されました。

助成金と寄付で活動を支えています。IFCAは日本とアメリカの社会的養護の当事者がお互いの国や地域のリーダーになるのを目的に、活動をしています。他の国のフォスターユースたちとも協働ができる機会も与えています。現在、IFCAは日本の他に、アルゼンチン、アイスランド、といった国との交流があり、これからも広がりを見せてゆくことと思います。IFCAは、フォスターユースによる世界で初めてのバイリンガル・ブログのサイトも持っています。

米国と日本のユースチームは、1年に1度、お互いの国を訪ね、交流、協働をしています。それ意外の時は、地域のなかで、そして各地のコンファレンス等でプレエンテーションをしたり、フォスターケアの変革をはかる、様々な活動をしています。
IFCAはまだ新しい団体なので、これからどのように発展してゆくかは、誰にもわかりません。

ここまで、いろいろとユース・リーダーシップについて解説してきましたが、そのことが皆さんにとって、なぜ大切なのでしょうか。その重要性について、いくつかかいつまんでお話しします。

ユースはフォスターケアを経験した当事者なので、十代の経験者として、専門家、という位置づけをしなければなりません。彼らの経験を、あらゆること、例えば政策や実践のプログラムを取り決める上で、認識し、価値をみいださなければ、ユースたちの生きて来た道を無効にすることになります。彼らのために何が最善の策なのかということを彼ら自身が決めることは無意味なことだ、という大人側の態度を示すことになります。

このことは重要です。なぜなら、日本のユースたちは、アメリカの若者たちと同じように、困難を抱えているからです。タイム誌やBBCは、フォスターユースたちが仕事探しに苦労し、自分たちの声を届けるのに困難を抱え、そして、鬱病も背負っている、と報道しています。アメリカでは、当事者を支える団体や組織を多く立ち上げています。日本にはそのようなサービスはどこにあるのでしょうか。

この語りは、だれも耳を傾けたくないことだと思いますし、私自身もそれに同感です。困難を抱えて生きている人たちに目を向けたいと思う人はいませんし・・・そうなると、何が解決策なのでしょうか。どんな展望を持って、これから我々はどこに行くべきなのか。

最後に、ユース・リーダーシップは、ユースに影響を与えるだけではありません。全ての人たちに影響を与えます。もしも、ユースに力を与えれば、立派なリーダーとなり、我々の国や世界を繁栄に導いてくれる。そして、それはそんなに難しいことではありません。メンタリングや、ユースと大人の支援者とのパートナーシップは、児童福祉自体を良くし、ユースに声をあたえ、リーダーとしての育ちを促進します。

国連とユニセフは、世界各国の児童福祉についてレポートを作成しています。国連のレポートは、日本の児童福祉は、多くの改善の余地があると伝えています。ユニセフは、データが足りない、と言っています。この偉大な国の改善、向上のために、持続できない状況があります。今、変革が必要です。そしてその変革はあなたから始まります。

これで私のプレゼンテーションは終わりです。皆さん、ご静聴ありがとうございました。もしも、このプレゼンテーションについて、IFCAについて、また私の他の活動について質問の有る方は、私に話しかけてくださるか、メールを送って下さい。どうもありがとうございました。

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