Author - ifcayouth

とても素晴らしかった日本の旅

 ジャネル・ブラクストン
「とても素晴らしかった日本の旅」
デルタ航空の飛行機で10時間のフライト。機内では、ほとんど私の母国語「英語」を知らない人間が隣に座っていました。胸の鼓動は激しくなり、これから起こることに思いをはせずにはいられませんでした。このときまさしく、私は、人生の新しいドアを開け、想像もつかない経験をするチャンスをつかみ、未知なる言語を話す文化圏に等身大の自分を突っ込こもうとしているのだと思いました。成田空港に着いて間もなくは、英語の看板に囲まれ、スーツケースを手に自分たちの行き先を指差す人々と、手続きを待つ人の長い列をみて「これは夢なのでは・・?」という感覚に浸りました。まっさらなパスポートに入国印が押されて、ようやく心身ともに日本に入る準備が整ったのです。この旅で私は、日本の文化について、フォスターケアシステムとそれが直面している課題について、計り知れないほど多くのことを学びました。自分の思いや経験を何百人もの前で話し、共有できたことは、「幸せ」という言葉では表しきれないほどの喜びをもたらしてくれました。日本にきたことは、私の人生を変えました。この旅は私の視野をぐんと広げ、これまでに気付かなかった多くの問題について目を向けさせてくれました。フォスターケアシステムを経験することに関して言えば、「差異」よりも「類似点」のほうがずっと多いこともわかったのです。 (さらに…)

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大学進学と奨学金制度

 山之内 歩
私は小学生の高学年の頃、里子であるということが原因でいじめをうけていました。殴ったり蹴ったりもされたり、携帯電話に死ねというメールが来たりしました。それが嫌でお母さんに中学受験をしたいと頼み、中学受験をさせて頂きました。そして大学の付属の学校に合格することができました。
私が小学生で里親さんの家に来た頃から夢は決まっていました。それは教師になることでした。里親のお父さんが教師をしていたからです。お母さんも自分の夢を応援してくれ、教師を目指して大学で勉強しています。 社会的養護のもとで生活する子どもの数は全部で約4万6千人います。その中で大学進学率は約20%となっています。大学卒業率は9%ととても低くなっています。毎日の生活費と大学の学費の両方を稼ぎながら大学の授業に出席しなければいけません。だから大学を中退してしまうのです。私も大学に通いながら塾のアルバイトをしています。 (さらに…)

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至福

 ジャニス・コール
高名な哲学者であり、神学者でもあるジョセフ・キャンベルは、こんな言葉を残している。「あなたの無上の幸福を追求しなさい。」この言葉を、キャンベルは自作の「英雄の旅路」の中にたくし、「旅立ち」「通過礼儀」そして「帰還」という三つの要素とともに語っている。
キャンベルは、この「英雄の旅路」の根底に流れているテーマは、どんな物語の中にも存在することを、一生をかけて論証した。まず、英雄は自己の日常の生活を離れ、冒険へと導かれる。そして、「通過儀礼」をとおして、未知の世界への旅路を歩み進んでゆく。新しい世界に突入した英雄は、試行錯誤と挑戦を乗り越えながら成長し、自分がもときた場所へ帰還する。旅から得た知識と自己成長をたずさえて、英雄は住み慣れた土地の民衆に、自分の体得したことの全てを共有しようとする。私は、この英雄の旅路は、フォスターケアの比喩だと思う。フォスター・ユースは、自分の家族から引き離され、見知らぬ世界(家庭や施設)に投げ入れられる。そこで出会うものは、挑戦と障壁。膨大な障害物をくぐり抜けることを強いられる。大人になると、フォスター・ユースは、社会的養護の当事者という役目を終えて、ふつうの人間として「帰還」することができる。その時点で、私も含めた多くのユースたちは、自分以外のフォスター・ユースのためになにかできることはないか、彼らの生活を改善するためにはどうしたらよいのか、と考える。 (さらに…)

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子どもの日

 ティム・ベル
子どもの日は、日本の国民の祝日だ。アメリカの母の日とか父の日に似ているのかもしれないが、これは、日本の社会の一部である子どもたちをお祝いする日なのである。僕としては、自分の「内なる子ども」を祝う日だ、と思っている。偶然にも、というか思いがけなく、5月はアメリカでは、「全米フォスターケア月間」だ。フォスターケアの中で起こる成功を祝い、何が変わらなければならないか、を知る月である。僕は米国に住んで、IFCA という国際的な団体を通じて日本と連携し、アドボカシー活動をしているので、すんなりとこのふたつのことを重なり合わせて考えてしまうのだ。日本の「子どもの日」とアメリカの「フォスターケア月間」のある時期に、このふたつの国が5月のある一定の日、または週、もしくは月全体をフォスターユースたち、そして、ケアを離れて自立したユースたちの経験を、 またかれらが誰であるかを理解するための特別な期間したらよいのではないだろうか。ユースたちの経験には、心温まることもあれば、ぞっとするようなエピソードもある。けれど、重要な事は、アメリカと日本でフォスターケアがもっと世の中に知られるように、話し合いができるような、そんな環境をつくることだと思う。 (さらに…)

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フォスターケアにいた時期をふり返って

今年の5月2日、僕はワシントン州のフォスターケア・トゥー21というプログラムを終了し、自立した。10年間暮らしたフォスターケアを正式に離れることになった。 21才になった僕は、今回の措置解除は、最初の18才の時よりも、難なく乗り越えることができた。
3年間措置を延長する前は、正直言って怖かった。自分が何をやっているのかもわからず、準備もできていなかった。「自分で全てをしなくちゃならない」という気がしていた。3年間という時間が手に入り、大人になる準備を整えることができた。自立に向けた新しい責任とチャレンジに立ち向かえたんだ。それになによりも、何か困ったことが起きたら、支えがそこにまだある、ということは心強かった。

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フォスターユースとメンタルヘルス

メンタルヘルス、という言葉を聞くと、即座に、重症の問題をかかえている人たちが頭に浮かぶけれど、それは私だけでしょうか。「いったい、メンタルヘルスとは何なのか」と思い、その言葉の意味を調べてみることにしました。米国疾病予防管理センターによると、メンタルヘルスとは『日常的なストレスに耐えることができ、生産的で意義のある生活がおくれ、社会貢献ができる 状態を意味する』とあります。精神障害という言葉の意味については、『思考や行動に、軽度から重度の問題があり、日常の生活に支障をきたしている状態のこと』という説明がされています。この両方の言葉の定義を読んで、私は考えてしまいました。

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措置解除: ジャニスの場合

“エージング・アウト”は、フォスターケアの世界では良く使われる言葉です。アメリカのフォスターユース(社会的養護の当事者)ならだれでも、18才の誕生日を迎える時、または高校を卒業する時に体験 は、ユースが州“エージング・アウト”とは、州政府のケアの下を離れ自立することなので、 官僚的な保護から自由な身になるのと同時に、ユースにとっては、それまでシステムの中にいたから受けることができた、あらゆるサービスを断ち切られてしまうことでもあります。

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フォスターケア・日本とアメリカの場合

タイム誌によると、日本では2009年、38700以上の18才以下の子どもたちが保護されているが、養子縁組をされている児童や里親家庭で暮らしている児童は、その10パーセントしかいない。ジャパン・タイムスは、2013年度の統計について報道している。日本のフォスターチルドレンの総数は約39000人。そのうち、里親家庭に措置されているのは、12パーセントのみ。

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措置解除: 良枝の場合

措置解除と聞き真っ先に浮かんだ言葉は『自由』でした。
18歳で施設を出て自立しなければならない私達が、これから歩む道に敷かれたレールなんてなく、全て自分達で開拓していかなくてはなりません。
自分の判断や行動が他の人よりも重く深い意味を持つことも事実です。

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措置解除: ティムの場合

自分の18才の誕生日のことを振り返る時、僕のことを支え、愛し続けてくれるはずだった里親が「僕を拒否した」思い出がよみがえってくる。少なくともその時はそう感じていた。でも実際には、里親と僕が思い描いていた「これからのお互いの関係」がふたつの違った方向をむいていただけだったことが、あとからわかった。

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