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2020 神奈川県児童福祉施設職員等研修

すずかと申します。現在大学2年生で、特別支援教育を学んでいます。よろしくお願いします。
私のこれまでについて簡単にお話します。 実家は障害のある弟と母親の3人暮らしでした。家庭での私の役割は、弟の世話係、おつかい、 料理、洗濯などで、母は私に学校では常にいい成績をとることを求めました。 母の希望通り高校は進学校に行きましたが、家庭での役割と高校生活をこなすことができな くなり、高校の養護教諭から児童相談所に連絡、高校2年生1月に一時保護となりました。 児童養護施設に入所していたのは7~8か月と短い期間でしたが、ひとつの例として聞いていただけると嬉しいです。
児童養護施設に入ってすぐ困ったことは「好きなの選んでいいよ」という言葉です。 普通の子どもなら喜びそうな言葉ですが、私はとても困りました。 常に母親の顔色を窺って生活してきたので、自分の意思で何かを選ぶということができなか ったんです。 入所してすぐ、寝具やパジャマを買いに行ったのですが、「好きなの選んでいいよ」と言われて も自分が何が好きか分からないし、できるだけ安いものを選ばなければとしか考えられません でした。他にも困ったことがあります。1日のスケジュールが決まっていないことです。 実家では知的障害のある弟のために、決まった時間に起き、食事をし、寝るということが当然 でした。世の中の多くの人が、仕事や宿題で寝るのが遅くなったり、家族の帰りを待って夕食 の時間を遅らせたりという経験があると思います。 私の施設では幼児から高校生までが同じ空間で暮らしていたので、日によって食事や入浴、就 寝時間がズレるというのが当たり前でした。 いろんなことが時間通りにいかなかったとき、私がどう思ったかというと、「夕食が時間通りに 始まらないのは自分が手伝わないからだ」とか「こんなに早く寝たら罰が当たる」というような ことです。
ここまでに述べたことは、私が入所当時困ったことでした。でも今となってはその経験に感謝 しています。自分が実家から離れてみて感じるのは、施設での生活のほうがずっと「普通」だと いうことです。 自分がどんな洋服を着るのか、何のキャラクターが好きか、何色が好きか。そういうことは子 どもであっても自分で選ぶ権利がありますよね。私は17歳までその権利が保障されていません でした。母の機嫌を損ねないものを選ぶのが最優先事項で、自分の意思で選ぶという経験があまりにも少なかった。その結果、「好きなの選んでいいよ」に困惑してしまう高校生だったわけです。 また今はひとり暮らしをしていますが、もし児童養護施設での生活がなかったら1日のスケジ ュール、時間というものに今も強くこだわっていたと思います。 何時になったから起きなきゃ、何時になったから寝なきゃ。それは自分のためにではなくて、 そうしないと怒られる気がするからです。そうしなければ生きていてはいけない気がしてしま うからです。でも実際には朝寝坊をしようと夜更かしをしようと生きていけます。困るのは自 分自身で、私を怒る人はもういません。
私が児童養護施設の職員さんにお願いしたいのは、子どもにできる限りの「普通の生活」を送 れるようにしてほしいということです。「普通」という言葉は曖昧ですが、おそらくそれは皆さ んが意識することもなく「普通」と感じていることです。帰ってきたときに部屋の明かりがつい ているとか、ちゃんと名前を呼ばれる、勉強に必要なものを買ってもらえる、「ドラえもん」を観 たことがある、遊園地に行ったことがある。 そういった「保障すべきもの」として明記されていないけど、子どもにとって必要な経験がたく さんあると私は思います。 過去の私のような「普通」を知らない子どもは、おさがり以外の服を着るという選択肢がある ことや、夏休みに映画を観に行きたいと言う権利を知らないことがあります。そのような子ど もが、他の子どもや職員さんとのかかわりのなかで、自分の好きなことややりたいことの選択 肢を増やしていったり、こうしてほしいああしてほしいという声を上げられるようになっていっ たらすてきだなと思います。
皆さんのかかわりで、子どもたちのこれからの生き方が大きく変 わるかもしれないチャンスだと思います。 子どもたちの明るい未来のために、子どもが幸せに暮らせる施設職員さんでいてくれたら嬉 しいです。

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